2017.03.05 O.A.
アメーバ経営とHPS活動で企業体質を構築
広島市西区に本社を置く広島アルミニウム工業株式会社は、国内11拠点、海外4拠点を構えるアルミニウムの総合メーカーです。主な製品は自動車部品。ダイキャストマシンが並ぶ最新設備の工場では、様々な自動車部品が製造されていきます。
創業は大正10年。金物などを扱う田島倉造商店としてはじまり、その後、いち早くアルミニウムという金属に注目し事業展開を始めます。
昭和初期には、アルミ鋳造で羽釜の製造を開始。しかし、原爆投下により工場は焼失、創業者まで失います。再興させたのは創業者の長男忠雄氏(現名誉会長)でした。生き残った職人たちと共に工場を再建し、羽釜に続く商品を考案。そして生まれたのが「無水鍋」。今でも多くの人に愛されているロングセラー商品です。
無水鍋が主力商品だったこの企業に転機が訪れたのは昭和30年代。マツダ(当時の東洋工業)との出会いがきっかけでした。それまでアルミスクラップの買い取りを行っていたマツダから自動車部品の依頼を受けたのです。
それまで培ってきた砂型鋳造の技術を生かし自動車部品産業に参入。R360クーペやキャロルなどの大衆車を作り始めていたマツダからの受注が増えるとともに工場を増やしていきます。いち早くダイキャスト鋳造も取り入れ急速に成長をしていくこととなります。
広島アルミニウム工業は、もともとは調理用具を扱っていた町工場。技術革新の速い自動車業界でどうやって生き残ってきたのか?
実は、ダイキャスト鋳造を始める時、同時に金型工場もつくり製作を始めたのです。
ダイキャスト鋳造は金型あっての鋳造方法です。その金型の構造を追求し、自社で製作することで社員の技術は向上。顧客の要望にも素早く対応し、質の高い製品を安定して製造できる力をつけたのです。
今では、金型の設計・製作から、鋳造、機械加工までを一貫して行う自動車部品業界有数の企業となっています。
着実に成長してきたこの企業には、規模拡大に伴い、企業基盤に緩みが生じてきました。良い生産現場への意識が個々の社員へ行き渡らなくなっていたのです。
田島社長は、経営を引き継ぐと企業体質構築に試行錯誤します。
まず始めたのが京セラの稲盛和夫氏が考案した「アメーバ企業」。組織を小集団に分け、それを独立採算制で運営していく経営手法です。
田島社長は言います。
「自分たちの成果が見えるというのがアメーバ経営のやり方。各部門が予実管理をし、自分達がうまく部内運営することで数字がよくなっていくのがわかるのがいい。」と。
アメーバ経営の導入で、「いいことはすぐやろう」「自分でやろう」という能動的な社員が育っていると言います。社員の中に「良い会社にしよう」という共通の意識が育ったことで、人材の登用にも役立っているようです。
アメーバ経営に続き取り入れたのはHPS自主研活動です。これはTPS「トヨタ生産方式」を活用した活動で、徹底した無駄排除により原価低減を目指します。
広島アルミニウム工業では専門のHPS推進室を設け、問題を抱えている部門に対し、推進室のメンバーと各部門から選出したメンバーが一緒になり現場改善に取り組みます。
社員自身が現場で原因を追究し改善策をたてるこの活動では社員の自主性も育まれていきます。活動の結果は役員が参加する報告会で発表します。実際に生産現場が改善されることが社員の自信につながっていると言います。
現在、国内に11拠点、海外に4拠点を構え、2,000人を超える社員を抱える広島アルミニウム工業は、大きくなった今だからこそ社員ひとり一人の意識を高め、そして、互いにつながっていく体制を作り上げていると言います。写真旅行や運動会なども行い、積極的に社内での交流の場も作っています。
田島社長は言います。
「社員がやる気になって頑張ってくれるのが一番大事。」と。
社員が責任を持って活動することが会社の活力になっているのです。
「改善に終わりはない」
社員みんなが「会社を良くする」という気持ちをもって社内が活性化する企業体質であり続けることを、この企業は目指しています。
ポイント「みんなの会社」
アルミ鍋の製造販売から始まり、現在は精密な自動車部品製造で伸展する広島アルムニウム工業。鋳造部品を金型から仕上げまで一貫生産、小物から大物まで精密鋳造、ダイキャスト製造に優れた企業である。
横川にある本社へ伺い、田島社長にインタビューしてきた。
「みんなの会社」 これが今回のポイント。
この企業は現社長が始めた「アメーバ経営」体制が根付いている。
アメーバ経営とは「組織を小集団に分け、それを独立採算制で運営していく」経営手法である。
間接部門に至るまでこの体制を導入しており、徹底している。
月に1回、報告会を行い各集団は常に経営状態をオープンにして、
最適な業務とするべく切磋琢磨している。
開始してから20年が経過、継続している源泉はどこにあるのか。
100を超える社内研修講座があり、八千代には研修センターがあるなど、
充実した社員研修をそなえている。講師は社員が行う。
小集団毎に経営を任せることで、各社員が採算性、予算・実績を管理し、計画に沿うべく改善をはかる。その成果を発表することで将来へ目を向けて頑張る。
基礎を支える研修等による人材育成と現場現物による小集団活動。そして愚直に続ける意思。
田島社長の思いは「社員にとって働きやすい職場環境の整備」にある。
社長が何もしなくてもしっかりと回っている会社にすることが理想にある。
そのためには働き甲斐のある教育、現場、雰囲気がなければ成り立たない。
企業が将来にわたり会社が発展していくために、人づくりは大切。
そこには「みんなの会社」意識を高める教育や発表する場、
成果を感じる場が必要であることを改めて感じる機会だ。
会社名 | 広島アルミニウム工業株式会社 |
---|---|
業種 | 製造業 |
事業内容 | 1. ダキャスト、砂型、金型、低圧、高圧凝固、鋳造製造の各製品の鋳造及び加工並びに販売。2. 樹脂製品の成形及び加工並びに販売。3. 調理器具製品の製造並びに販売。4. 軽合金地金の製造並びに販売。5. 上記各種型具の設計製作並びに販売。6. 前各号に付帯する一切の業務。 |
代表者 | 代表取締役社長 田島文治 |
従業員数 | 2,335人(2015年度末現在) |
年商 | 964億円(2015年度末現在) |
所在地 | 営業本社:広島県広島市西区横川町3丁目6−3 |
お問い合わせ | TEL:082-233-1111FAX:082-233-3351 |
ホームページ | http://www.hai.co.jp |