2019.01.20 O.A.
目指すものは匠の技 コンクリート補修の新技術
5000トン級の船舶が停泊可能な、大規模港湾施設。
そこで行われていたのは、
コンクリートメンテナンス協会による、
「亜硝酸リチウムを用いたコンクリート補修」の見学会。
コンクリートの耐用年数を飛躍的に伸ばす「リハビリ工法」。
それは2018年の「中国地域ニュービジネス大賞」を受賞した、新技術なのです。
リハビリ工法開発の、中心となった企業が、
広島市中区にある、福徳技研株式会社です。
主な業務は塗装業。
一般家屋からビルの外壁、橋梁や鉄塔まで。
活躍の場は多岐に渡ります。
徳技研のもうひとつの柱。
それがコンクリートを補修する、リハビリ工法なのです。
頑強な印象を持つコンクリートですが、
激しく劣化することがあります。
主な原因は、ふたつあります。
ひとつが[塩害]。
海沿いのコンクリート構造物は、常に海風(うみかぜ)にさらされています。
海水が染み込むと、鉄筋の表面を保護している、
不動態被膜が破壊され、サビが生じます。
膨張したサビの圧力で、ひび割れを起こすのが、[塩害]です。
もうひとつが[アルカリシリカ反応]。
コンクリート内にあるアルカリ成分が、
砂利や砂といった、骨材の表面を膨張させます。
その圧力で、ひび割れを起こすのが、[アルカリシリカ反応]です。
コンクリート劣化の原因を知り、根治的な解決をする。
リハビリ工法はその追求から生まれました。
コンクリート構造物に穴を開けて、亜硝酸リチウムを注入。
鉄筋の腐食を抑えることで、コンクリートの劣化を防ぐ。
それが、福徳技研が開発した、リハビリ工法なのです。
リハビリ工法の誕生には、福徳技研の歴史が大きく関わっていました。
昭和41年(1966年)主に土木工事を行う、福徳開発としての創業。
塗装業の拡大に伴い、昭和52年(1977年)に、社名を福徳塗装工業に変更。
順調だった会社の業績。
そこに訪れたのは、バブルの崩壊でした。
新事業を模索する中でたどり着いたのが、コンクリートの補修でした。
コンクリートの下地を扱う塗装業の延長線として、新事業として取り組むために、
数々のセミナーに参加。
そこでコンクリート表面から塗るだけで、鉄筋の腐食を抑制出来るという、
亜硝酸リチウムと出会ったのでした。
しかし施工法には疑問がありました。
「コンクリート構造物は、壁圧が1mくらいはある。
その表面から塗っても、本当に浸透しているか解らない。」
そこでコンクリート表面に穴をあけて、亜硝酸リチウムを圧入。
すると、鉄筋の表面の不動態皮膜が再形成されて、
サビの進行が止まり、骨材の膨張もおさまったのです。
新たなコンクリートの補修工法である、リハビリ工法が誕生。
平成22年(2010年)、リハビリ工法の開発を機に、
社名を福徳技研に変更したのでした。
福徳技研は、極東興和、広島ガステクノ・サービス、
井上建設とともに、
コンクリートメンテナンス協会を設立。
亜硝酸リチウムを使ったコンクリートの補修工法について
定期的にセミナーを行っています。
リハビリ工法を必要とする企業には、ライセンスを発行し
ライセンスを持った技術者が現場に常駐しないと材料も技術も使用させないことで、品質を保つようにしています。
また、広島工業大学でコンクリートの研究をする竹田先生とともに、
亜硝酸リチウムの性能研究。
さらに現在は、長崎の軍艦島で、リハビリ工法の実証実験を行っています。
「文化遺産を守る、コンクリートの匠になりたい。」
それが福徳技研の夢なのです。
『それぞれが儲かるために』
塗装業としてスタートし、現在は独自のコンクリート補修技術の全国展開している福徳技研。耐久性の高い塗装で覆われた本社、そこには福徳技研以外にコンクリートメンテナンス協会、近未来コンクリート研究会など組織的な活動の拠点にも提供されている。
今回のポイントは「それぞれが儲かるために」とした。
徳納社長は時代の変化を敏感に感じ取り、常に新技術を取り入れ事業を推進してきた。厳しい時にこそ新しい技術を模索し、取り入れた技術は自社内で研究し、最適な施工方法を開発、最適な材料への改良を進め、オリジナルな技術として確立していく。
この当たり前の開発を当たり前にコツコツとあきらめずに進めてきたから、今の福徳技研があるとのこと。
徳納社長は規模の拡大より柔軟に動ける規模で、仲間を増やすことで全体の規模を拡大していく方がよいと考え、それをコンクリートメンテナンス協会として実行している。全国でセミナーを開催し5年で6000名の人に聞いてもらったそうだ。21社から始まり、いまは各地に会員がおり110社となった。
開発も新規事業も一人ではできない。多くの企業と建築・土木・材料など大学・企業の多様な専門家の指導や協力が結集することで大きな力となりその活動が信用となっていく。
その成果として加盟各社が多くの受注を得られるようになってきた。もちろん、地域各社がそれぞれ受注するための努力をする。福徳技研はそのサポートとして工法指導や資機材提供も行う。会員からは多くの課題や要望が寄せられるが、これこそが開発のネタである、として次の技術開発へ燃える、萌える。この開発マインドが素晴らしい。
今回のポイントは「それぞれが儲かるために」とした。まさにそれぞれの努力を結集する活動が新規事業を成功させる秘訣だといえる。
日本の社会インフラは危機的な状況にある。73万箇所に及ぶ橋梁があり、地域の交通を支える、なくてはならないもの。橋梁のみならずコンクリート構造物は文化財にも及ぶ。しかしながらこの維持、メンテナンスはなかなか予算配分されない。
以前、やまぐち産業振興財団でも放送したコンクリート橋梁の補修は喫緊の課題となっていることは伝えている。
補修に関する工学は比較的最近の技術でもあり、設計者・発注者の知識はまだまだ不足している状況にある。
「コンクリートの新たな復旧・復元方法」として福徳技研ならびに全国のコンクリートメンテナンス協会会員が構造物のリハビリを進め、今ある構造物をより長く使い続けられるようにしてほしいと願う。
会社名 | 福徳技研株式会社 |
---|---|
業種 | 建設業 |
事業内容 | コンクリート改修工事 建築塗装 橋梁塗装 防水工事 内装工事 材料販売 宅地建物取引業 |
代表者 | 代表取締役 徳納 武使(剛) |
所在地 | 広島市中区東千田町二丁目3番26号 |
お問い合わせ | 082-243-5535 |
ホームページ | http://www.fukutoku-group.co.jp |