2013.09.22 O.A.
画期的な調理技術が食材の未来を変える!
2013年6月。大阪で開かれた「料理マスターズブランド認定品プロジェクト」。農林水産省が2010年に創設した料理人顕彰制度『料理マスターズ(日本の第一次産業の活性化に貢献している料理人を国が表彰し、日本の食を支えるシステムを強化。食と農を通じて地方の活性化を目標としています)』。その料理マスターズ受賞者の有名料理人が、審査員となって認定される「新たなブランド食品」の誕生。それが「料理マスターズブランド認定品プロジェクト」です。㈲瀬戸鉄工は、呉市のグリーンファームと共同開発した「安芸津の焼きじゃがポタージュ」で最終審査にノミネートされました。「安芸津産のじゃがいも」は、全体の約2~3割が規格外品(B品)と呼ばれる「傷物」になってしまいます。その規格外品じゃがいもを使って、お湯に混ぜるだけで簡単に出来る美味しいポタージュに仕上げました。瞬間高温高圧焼成法で加工した「じゃがいも」は、風味や旨味、栄養素が丸ごと生かされています。審査結果は、中国地方で初めてブランド品認定を受賞。食材の普及や、食文化の発展に貢献していることが認められたのです。
この新食材を作っているのが、広島県呉市川尻町にある(有)瀬戸鉄工です。売り上げの9割を食品事業部門が占める会社です。その原動力となっているのが『瞬間高温高圧焼成法』と呼ばれる、独自の食品加工技術。食材に60tの高圧プレスをかけ、一瞬で均一の焼きを入れる技術です。この技術を使った食材加工は、素材が持っている旨味成分を丸ごと凝縮。つなぎなしの原材料100%の加工食材(フレークやパウダー)に生まれ変わります。 原料が組織レベルで粉砕され多孔質状となっているため、「あご・いりこ・カツオ・カキ」等の出汁にした場合、凝縮した旨み成分を、より早く、濃く抽出することを可能にしました。お湯以外に、水の状態でも出汁の旨味が抽出できます。 『瞬間高温高圧焼成法』は、企業や地方自治体・大学・研究機関などと年間100例以上の食材開発を可能にして来ました。通常、調理の際に過熱で失われやすい栄養素やビタミンも、玄米で比較してみると、加工後の「玄米パフ」の中に、ビタミンB群「ニコチン酸」「ニコチン酸アミド」「ピリドキシン」「チアミン」が豊富に残っていることが分かります。(※広島県立大学生命環境学部・武藤教授調べ)
「瞬間高温高圧焼成法」で加工した、"焼き米粉"。そのパウダーは保水力が高く、自在に「とろみ」がつけられることが分かったのです。これまでのソース作りは、素材を加熱してとろみを加えていましたが、"焼き米粉"のパウダーを使うことで、加熱すること無く、香りを生かしたピューレ状のソースやジャムが、短時間で簡単に作れるようになりました。
7月。"自分らしく生きていくために"介護の新しいスタイルを目指す「アートな介護」展が福屋八丁堀本店(広島市中区)で開催されました。この会場で、米粉を生かした新しい「粉末介護食」を提案。 『まんま』と名付けられたこの粉末介護食は、粉にお湯をかけて混ぜるだけで、「野菜」や「果物」の風味や栄養素をそのまま食べられるジャムの新商品です。新鮮な風味や旨みに、高齢者介護に携わるお客の反応は"風味を楽しんだり。ちょっと舌の上に乗せるだけでも楽しめる。例え飲み込めなくても…。"と好評でした。
県立広島大学人間文化学部健康科学科の栄養学博士・栢下淳(かやした)先生と連携した、介護食の新たな取り組みが始まっていました。美味しい「嚥下食」の開発です。栢下先生は、嚥下機能の低下した高齢者への適切な食形態の提供を研究している専門家。瀬戸鉄工・食品事業部の上田部長と2人が目指していたのは、「焼き米粉」を使ったお米の香りがする美味しい嚥下食の「お粥」。 当初は、『付着性が高く』『飲み込みにくい』問題点を、どのように解決していくかが問われました。 上田部長も、介護現場で実際に使われている嚥下食のお粥を体験し、その凝集性や付着性、とろみ具合を確認していきます。瀬戸鉄工食品事業部チームは、嚥下機能の低下した高齢者が食べやすい「お粥」を求めて、何度も試作に挑戦。「付着性」を改善するために、米粉・酵素・お湯の配分を変え、喉越しがスルリと食べやすいベストの状態を探っていきます。そして、8月。栢下先生と瀬戸鉄工が追い求めてきた、お米の香りがする美味しい『嚥下食の「お粥」』の試作が完成。今後は、「嚥下障害のある高齢者の皆さんに、実際に食べていただきながら改良点を微修正して行けば、市場性の高い製品に育って行くと思います」と、栢下先生も期待しています。
「フード特区」北海道。その中で、豊富な水産資源の活性化推進を受け持っているのが『函館』です。 北海道大学水産学部がある函館では産学官連携で、食品を食べて健康になろうと言うフード&ヘルスイノベーション事業と、高品質で高付加価値の商品を開発するマリンバイオクラスター事業に取り組んでいます。北海道大学水産科学研究院・増殖生物学分野の水産学博士・浦和寛先生が取り組んでいるのが、磯焼けウニの生殖巣を育てて商品化する「餌の開発プロジェクト」です。 磯焼けのウニは、生殖巣が小さく色も悪いため商品価値が無く、漁師も獲らないのが現状です。そのため磯焼けの問題が解決されないのです。そこで、この未利用な磯焼けウニに新しい付加価値が生まれれば、漁師が獲るようになり、磯焼けの海に再び「海草群落」が復活すると言う夢の取り組みです。今後は、「ウニの生殖巣の中に、健康機能に有効な成分が含まれているか?」と言う研究に成果が出てくれば、瀬戸鉄工の技術を使って新たな機能性食材の商品化に取り組み、皆が手軽にウニを食べられるフード&ヘルスイノベーションに挑戦しています。
会社名 | 有限会社瀬戸鉄工 |
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業種 | 製造業 |
事業内容 | 樹脂成型、食品加工、食品、調味料等の製造・販売 |
従業員数 | 35名 |
年商 | 3億4,500万円 |
所在地 | 広島県呉市川尻町上畑1068-4 |
お問い合わせ | TEL: 0823-87-4147、FAX: 0823-87-3748 |
ホームページ | http://www.yakiiriko.com/ |