2015.03.22 O.A.
地元の食文化を伝えたい - 飲食店経営企業が産直市の経営に挑戦!
広島県安芸高田市。国道54号沿いにある八千代産直市場は、地元生産者の採れたれ新鮮野菜が並ぶ人気の産直市です。平成12年に地元生産者が立ち上げた「土日の朝市」が始まり。平成21年には企業が経営を手がけるようになり、名称も「八千代産直市」となりました。この産直市に、また、新たな動きが始まっています。店頭にあるコンテナでは、新しい看板が取り付けられ、中では新しく仲間入りをした新店長が調理。新しいフードコーナーの準備が行われていました。実は、この冬、経営する会社が変わったのです。
現在、産直市を経営しているのは、八千代産直市場株式会社。株式会社A.C.E.が立ち上げた会社です。株式会社A.C.E.は、広島市内に4件の和食店を経営する企業です。井手祐之社長は、「地元の素晴らしい食文化を伝えたい」と、自ら生産者のもとへ足を運び、『縁』を紡ぎながら食材や酒を掘り起こしてきました。そうした店づくりで業績を伸ばしてきた中、全く業態の違う産直市場の経営に挑戦!そこには、「業態は違えど、『食を通じて本当の喜びを伝える』という理念は同じ。産直地の仕組みやビジネスの内容を把握し、管理することができればやっていける」という井手社長の考えがありました。
産直市経営、最初の仕掛けは、「フードコーナーづくり」。目玉となる商品は、地元で獲れる鹿肉を使ったハンバーガーです。子どもから大人までが楽しめるメニューとして考案しました。しかし、そこは、飲食業のプロ。味にはこだわります。「フードコーナー」目的の客も増えてもらいたいし、そのお客様方に野菜や安芸高田市の良い物を見つけてもらいたい」と、中村新店長は言います。八千代産直市場に新たな賑わいが生まれそうです。
産直市で最も重要なこと、それは、質の良い新鮮野菜をいかに安く、たくさん並べることができるかです。八千代産直市場には、900人以上の登録生産者はいますが、思うように集まらないのが現状でした。生産者によって、野菜の質や意識にばらつきあるのです。「良い食材を生み出すには生産者の思いが大切」と考える井手社長は、産直市に足を運び、地元生産者をとりまとめてきた方との対話を重ねます。この場所に最初に朝市を立ち上げたメンバーの一人である田中氏です。田中氏は、新しい経営者がもたらす変化をこんな風に言います。「売ってやるぞ!という気持ちを感じる。出荷する我々も勢がいい」
中村新店長になってから、産直市には新しい売り方も登場しました。「野菜の袋詰め売り」です。これは、野菜を大量に生産している「すみおファーム」の提案からでした。担当の浅枝氏は言います。「私たちの農園は量を作っているので、どうしてもB級品や規格外の野菜が出ます。店長に相談したら、快く場所を作ってくださったので、袋詰め売りを始めました。」と。このような中村店長の姿勢に、「自分たちもいろいろ協力していきたい」「みんなが集まって話をする場ができれば、もっとよくなると思う」など、若き生産者たちの気持ちも動き始めています。
産直市への挑戦の目的の一つとして、飲食店を担当する社員を含む全社員、チーム全体が成長していくことがあると井手社長は言います。「お客様に満足して帰ってもらいたいという思いは、飲食店も産直市も同じ。自分たちの知らない…まして、お客様が知らない、素晴らし食材はまだまだある。それを、いろいろな形で掘り起し、もっと伝えていきたい。」飲食事業を統括する役員は語ります。
新しくなったフードコーナーは2月末にオープン。地元食材を活かしたメニューは徐々に人気を集め、市場の活気につながっています。春からは、広島市内のお店と提携した美味しいパンの販売も始まります。新しい経営者による新たな賑わいづくりは着々と進みます。この様子を見て、地元生産者の田中さんは、「お客さんがたくさんくると生産者が張り切り野菜の精度もますます良くなる。そして、出荷も増える。こうした良い循環になることを願っています。」と言います。この循環こそ、井手社長が考える「地元の素晴らしい食材を伝えていくこと」につながるのです。
株式会社A.C.E.が始めた産直市経営には、さらに狙いがありました。それは、産直市に集まる野菜などを広島市内の飲食店に届けることです。そこには、井手社長の思いがありました。「14年間の飲食店経営を通し、質が良く、しかも安い野菜の調達は簡単にはできない。今、産直市に、みんなのハート「良い野菜」が集まっている。流通システムを作ることができれば、この野菜をまとめて飲食店に届けることができるようになる。これが次のビジネス展開として目指すところである。」