2018.08.19 O.A.
伝統を守り革新を続ける
「我馬」が誕生したのは2000年3月。今では新ジャンルの店を含めた12店舗を構える人気店に成長しています。運営しているのは、株式会社アースフード。福岡出身の山﨑社長が、イタリア料理店と福岡の有名ラーメン店で修業をし、我馬を創業しました。
我馬は三篠店からスタート。絶好の場所という三篠店での売り上げは、開店してわずか20日間で、およそ1000万円。今や年間の売上およそ12億円。ラーメン150万杯分を売り上げるほどの人気店に。
実は、我馬西条店の裏に我馬の根幹をなす工場があります。どの店舗に行っても、味のブレがない美味しいラーメンが食べられるように工場を作りました。
もともとは、各店舗でスープを作っていた我馬。しかし、それにより味にばらつきが出ていました。この問題を解決するため、工場を作り、スープや麺を管理するプロフェッショナルを配属。
豚の頭だけを使ったこだわりのスープは、とコクがあってクリーミーで優しい味。麺は水分量を減らした製法で作る「低加水麺」。低加水で作る、細く・四角い我馬の麺は、さくっとしてスープに絡みやすいのが特徴です。
工場で作られた麺やスープなどはその日のうちに各店舗へ搬入されます。
しかし、我馬は、順風満帆に成長してきたわけではありませんでした。主な原因は、店舗数の拡大。
「3回くらい潰れそうなときはありました。やっぱり人と人との関わりが薄くなると経営も難しくなるんです」と山﨑社長。
アースフードは立て直しを図りました。まず、リニューアルで勝負。こだわったのは「1店舗1コンセプト」。地域性や客層に合わせ、各店舗に個性を出し、地域に溶け込む。信頼される店を目指しました。
さらに、来店客を満足させるため、従業員たちがアイデアを出し合いました。例えば、使い捨てではなく布おしぼりを食前と食後に出す。ご飯だけでなく、ひと手間かけたおむすびもメニューに加える。細かいサービスを続けることで、客足は戻り、増えていきました。
「いい時ほどあまり知恵がでないんです。悪くなった時にいろんな知恵がでるので、そこでできた新しい、原因追究してクリアしたことが、前よりちょっと良くなる。だから悪いときはないといけないんです。」と山﨑社長。
毎年開催する「経営方針発表会」。そこで店舗の方針を発表するのは経営者ではなく、従業員。なぜなら「店は従業員が作る」ことにこだわっているからです。
店舗に出すメニューも従業員のアイデアが活かされます。「GABA KITCHEN(がばキッチン)」と呼ぶ研修室。ここで、従業員が考えたメニューを店舗ごとに作り、グランプリを競い合う「G1グランプリ」が毎年開かれます。
入賞作品は期間限定ラーメンとして全店舗のメニューに加えられます。
「『ぜひあなたにやってほしい』と伝わるとやりがいに変わって、結果いいものが出来上がってきます。外食産業は絶対なくならないと思う。実際に伸びていってますから。そこで、この時代に合わせてもっと進化した業界にしていかなくてはいけないし、素晴らしさももっと伝えていかなくてはいけないと考えています。」と山﨑社長。
人材も自信を持って育成しています。三篠本店の鶴田さん。学生アルバイトを経て正社員になり、27歳の若さで店長に抜擢されました。
「大変とはあまり思わなくて、どちらかというと大変なことも楽しい。」
企業が力を入れているのは、昇格制度。アルバイトにもリーダー・サブリーダーなどの役職を与え、やる気につなげています。
そして、新しくA社員制度をスタート。勤務地の移動や残業がなく、時間に制限のある主婦なども正社員として活躍できる画期的な制度です。A社員で副店長の小田さん。
「ただ収入を得るだけではなくて、子供が育ったあとでも自分に何か残るものが、ここだったらできると思います。」
研修室の壁に気になる文字が。
「僕らが基本としている『ありがとう』。頭の知能指数はIQなんですけど、EQは心の知能指数といわれ、それを代表する言葉で『ありがとう』。やっぱりEQが高い人は何かにつけて『ありがとう』と発信する人ですし、成功者にも多いですし、幸せになっている人にも多い。従業員のEQは高いです。働いていると高くなります。」と山﨑社長。
新たな業態での進出もスタート。2017年11月、「天麸羅すえ廣」をオープン。そして、2016年6月には、ハワイに「うろん〝釜だしホノルル店」をオープン。海外への進出も成功させました。
今後海外とかも挑戦していきたいですし、もっと良くしてあげなくちゃいけない。働いていて本当に良かったと思えるようにですね。」と山﨑社長。
アースフードの原動力は豊かな人間力と技術力。これからの戦略を社長に聞きました。
「何もしなくて止まった時点で衰退するようにできていると思うんですよね。なので、やっぱり今を守る、今を継続するために何かしら挑戦をしないと継続はできない。伝統は革新の連続です。」
我馬のラーメン店などを運営するアースフード。おいしい話を伺いに本社へ山﨑社長を訪問した。
今回のポイントは『変わらないために変わり続ける』ことにある。
外食産業も人手不足もあり、事業の拡大は容易なことではない。山﨑社長は提供するメニューも大切だが、とにかく人づくりに注力しているという。いまやラーメンも和食に入る。和食はおもてなしできる心と技により人を感動させる。世界に誇れる、認められる食が和食であり、これをいつもできていなくてはならない。この感動はちょっとしたことですぐ衰えてしまう。実際に何度か経営危機に直面したことがあるとのこと。
そこでいつも振り返り見直したのはおもてなしのあり方だった。社員のアイデアにより、経営を復活させてきた。おしぼり一つ、注文の取り方一つにとっても重要で、改善すればよくなることもわかってきた。
同じ味(もちろん改良を重ね、新商品もでているが)で18年も継続できる我馬のすごさは、『変わらないために変わり続ける』ことにある。そのために研修に力を入れアースフードのホームページには研修の内容まで公開している。働くことの楽しさ、やりがいをアースフードで実現してほしい、と発信している。
これからのアースフードはどうなるのか。山﨑社長は『広島の食の観光化』を拡大させたいとのこと。お好み焼き、もみじ饅頭、牡蠣料理… そこにいろいろな地場食材を活用した。メニューや様々な飲食店へ食べに来てもらえる観光に押し上げたいそうだ。
一方でハワイに店舗を出すなど海外への展開も進める。海外に店舗があれば日本に広島に関心を寄せ、訪れる観光客も増えていく。おもてなしの心と技の提供は、食べることだけでなく体験する楽しさ、それを提供する楽しさにつながる。サービスの価値を上げることは、その場を来客と店員が作り出せる新しい価値の創造にもつながるものだ。これは飲食だけでなく様々な事業にもいえることだと考える。
『変わらないために変わり続ける』ことは企業経営にとって必須ともいえる。
おもてなしの心と技で新しい価値を創造してほしい。
会社名 | 株式会社アースフード |
---|---|
業種 | 宿泊業,飲食サービス業 |
事業内容 | ◎ラーメン「我馬」・麺屋台「我馬」(広島県内に9店舗) ◎「うろん釜”だし」の経営(ハワイに1店舗) ◎「天麸羅すえ廣」の経営 ◎食材、食品の開発・製造および販売 ◎飲食事業に関するコンサルティング |
代表者 | 代表取締役 山﨑 智太郎 |
従業員数 | 310名 |
所在地 | 広島市西区三篠町3-10-2 米村ビル2F |
お問い合わせ | 電話番号(082)509-1130 FAX番号(082)237-1150 |
ホームページ | http://www.gaba-2000.com/ |