2021.09.04 O.A.
環境を考える 世界で活躍するセンサー
1990年代に酸性雨による森林破壊と健康被害につながる大気汚染で自動車の排ガスに対する先進国で厳しい規制が始まりました。その対策の切り札として日本で初めて導入が始まったのが尿素SCRシステム。ディーゼルエンジンを動力とする、乗用車やトラック、建設機械、農業機械に搭載されている排ガス浄化装置で、排ガスに尿素水を吹きかけ、化学反応を通じ、有害な窒素酸化物を、空気の成分でもある無害な窒素ガスと水蒸気に戻します。
排ガスを安定して浄化させるためには、尿素水の濃度を32.5%に保つ必要があります。例えば40%の高い濃度だと、尿素水が0℃で凍結してしまうのです。32.5%ならマイナス11℃から凍結が始まります。また、濃度が低い場合は、有害物質の無害化ができなくなってしまうのです。そこで使われているのが、先端的な薄膜技術を駆使したサンエーの尿素水識別センサー。非常に薄い多数の膜を積み上げて、安定な機能を実現する独自の薄膜技術で、その厚さはなんと2ミクロン(0.002mm)。また熱を感知するこのセンサーの方式では、振動や土砂など非常に厳しい環境の中でも常時監視することができ、わずかな温度差を確かな制度で捉えることが可能です。 世界で唯一のこの技術は環境にやさしく安全な走行に欠かせないテクノロジーなのです。
国内への出荷はもちろん、多くの製品が、ヨーロッパや中国などの海外へ出荷されているサンエーの尿素水識別センサー。世界で需要の高まる、尿素水識別センサーは全自動のロボット生産により年間およそ100万個ものセンサーが作られています。また、機械では限界がある細かな作業は、ひとつひとつが人の手で行われており、こうした技術を継承している人材が支えています。長年の研究によりセンサーの小型化、軽量化も実現。コンパクトな上、薄膜センサーは熱伝導率の微妙な違いを計測できることから様々な分野への応用、活躍する期待が高まります。
微妙な濃度差を図る薄膜技術のサンエー。
サンエーの情熱!「技術を極める」こと。
三次にあるサンエーの本社工場を訪問、山岸会長・吉住社長にインタビューを行った。知る人ぞ知る世界初の技術ということだが、実は見えないところで大活躍している優れもの。
トラックなどの排気ガスをきれいにするため尿素水の適正濃度32.5%を正確に管理するセンサーの世界的な特許製品である。
ポイントは薄膜積層技術にあり、2ミクロン(0.002㎜)という薄いセンサー。更にすごいのはちょっとした力で壊れそうなセンサーをトラックの激しい振動の中で安定して測定し制御信号を送り続けるところ。そして経年変化にも強くなくてはならない。
サンエーはセンサー液体や気体の中で安定して使える形に封止して、小型軽量化も進める付帯技術の開発もして薄膜センサーを供給している。この尿素センサーは世界的な環境規制に対応し、国内はもとより海外の車にも取り付けるため更に増産していくそうだ。
サンエーの薄膜技術は大手企業との共同研究から開発が始まり、その後技術譲渡を受けて自社製品へと発展させている。サンエーは独自技術として研究開発を進め、技術を極めてきた。このような努力もあり様々な資金調達を経て今がある。
中小企業において独自技術を極めることは企業の価値を高める持続していく重要な手段と言える。
山岸会長・吉住社長にこれからの薄膜センサーの展開について伺うと、自動車・建設機械以外の用途展開を広げ、世の中に役立つセンサーを広げていきたい、とのことだった。
薄膜センサーは熱伝導率の微妙な違いを計測できることから、液体物質の識別や劣化度合い、混合比率などに応用が期待できる。振動や設置する環境に関わらず、極小のセンサーとして医療分野の装置に展開が考えられる。親会社のゴム成形品などの融合により広い分野に対応するべく開発をすすめられる。この機会にぜひ一緒に横展開を広げる提携先を探したい、とされている。
技術を極めるサンエー。私も薄膜技術の用途をいろいろと考えてみたい。薄膜センサーでサンエーがさらに発展することに期待する。
会社名 | 株式会社サンエー |
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業種 | 製造業 |
事業内容 | 尿素水識別センサーの設計・開発・製造 燃料識別センサーの設計・開発・製造 その他応用製品の設計・開発 |
代表者 | 山岸 喜代志 |
従業員数 | 141名(2021年4月1日現在) |
所在地 | 〒728-0017 広島県三次市南畑敷町870番地38 |
お問い合わせ | TEL.0824-63-5331 |
ホームページ | http://www.sun-awks.co.jp/ |